
南丹市
わさびのおひたし
文化的資源としても貴重な自生のわさび
南丹市美山町の芦生地区で「芦生三大祭」のひとつとして今も行われる「わさび祭り」は、毎年4月10日に芦生熊野権現神社で行われ、神前にわさびを供えることからそう呼ばれる。
芦生は険しい山中にあって田畑が少なく、人々は猟と山菜をとることで生活し、冬になると熊狩りをして生計を立てていた。そのため、狩猟をする間の無事を祈り、年の暮れから祭りの当日までわさびを口にしてはいけないという風習が今も残る。芦生地区はわさびが自生する貴重な産地として知られる。そのわさびは芦生独自のもので他ではみられない。人々は自生するわさびの〝ねどこ〞をそれぞれ持っている。収穫したわさびはおひたしにして、熊野権現神社の神前に供えられる。
祭りの神事が終わると供えられたおひたしが参加者に振る舞われるが、これは今ではとても珍しいとされる。わさびは茎と根が一緒に盛られ、ネコヤナギの木で作られた箸が「カミオギノシンボク」として添えられ、この箸で食べる。以前は芦生で自生するわさびが使われていたが、深刻化する鹿などの食害によって量を減らしており、栽培されたものを使用することも増えた。そのため、芦生のわさびを保存するための様々な取り組みが行われている。