移住者インタビュー

伝統芸能が盛んな京丹波町和知地区での子育て
伝統芸能を通じて育む子どもの未来

伝統芸能が盛んな京丹波町和知地区での子育て伝統芸能を通じて育む子どもの未来

今回は2021年に三重県鈴鹿市から京丹波町和知地区へ移住された的場凛さんにお話を伺いました。和知太鼓、和知人形浄瑠璃など伝統芸能が盛んな和知地区。太鼓奏者でもある凛さんが、伝統芸能を通じた子育てへの思いを紹介します。

的場凛さん

2021年に三重県鈴鹿市から京丹波町へ移住。太鼓奏者として各地で公演や太鼓教室を開催。地元鈴鹿市では観光大使を務める他、森の京都文化観光サポーターとして、京丹波町の伝統芸能を継承していく活動も行なっている。

京丹波町へ移住されたきっかけは?

凛さん:京丹波町への移住は主人との結婚がきっかけでした。最初は、半分京丹波町、半分三重県鈴鹿市の生活をしていましたが、子供が生まれた際に、初めて住所を移し、本格的に京丹波町での生活を始めました。最初は田舎暮らしに不安もありましたが、実際に住んでみると、思った以上に住みやすく、むしろ楽しいと感じました。

移住を考える多くの方は、田舎暮らしに対する憧れや目的を持っていると思いますが、私の場合は正直、田舎での生活に対して少し腰が引けていました。しかし、住んでみると、京丹波町の景色がとても心地よく、自然の美しさや温かさが大きな魅力でした。特に、私の故郷では見られなくなった景色がここにあり、それが移住をして良かったと思えた一因です。

また、人と人との距離感もとても良いと感じました。鈴鹿では近所付き合いが徐々に薄れてきていたのですが、こちらではコミュニケーションが温かく、バスの運転手さんが子供を降ろす際に必ず立ち止まってくれるなど、細かな気配りが嬉しかったです。こういった温かい人との繋がりが、京丹波町での生活を楽しいものにしていると実感しています。

京丹波町と三重県鈴鹿市の2拠点生活についてお聞かせください。

凛さん:私は演奏者という特殊な職業についており、今でも地元の鈴鹿市で仕事を行なっています。仕事柄、全国を移動することが多いので、2拠点での生活に特に困ることはありませんでした。子どもは0歳の頃から、京丹波町と鈴鹿市を行き来しています。子連れでの大変さは感じましたが、それも後に良い思い出になるだろうと思っています。

2拠点生活の大きなポイントは、京丹波で得たものを鈴鹿で活かせることです。例えば、京丹波の農産物を鈴鹿で販売し、私の公演の際に京丹波の元の特産物を提供することなど、地元とのつながりを深めながら仕事を進められたことが大きなメリットでした。移住を決めた後は「大変だ」と感じるよりも、どのように楽しむかを考えることに力を注ぎました。

移住前に調べておくべきポイントは?

凛さん:移住前に調べておけば良かった点としては、まず雪に関することですね。私の故郷では雪がほとんど降らない地域だったので、京丹波の冬の雪には少し驚きました。しかし、これも徐々に慣れ、楽しむことができました。

私の場合、結婚をしたタイミングがコロナ禍で、主人の所属する部署がコロナ対応に追われていたので、環境が変わった中で一人の時間が多くなり不安を感じました。地域におけるつながりが大事だということも、移住前に知っておくべきでした。特に横のつながりが作りにくかった時期だったので、誰に何を聞くべきかがわからず、最初は不安でした。今はネットで情報が手に入る環境ですが、各地域の特性やどんな方が活動されているかなどは、現地に訪れないとわからないことが多いです。個人の思いや目的を踏まえて、どの地域でどんな人たちと関わっていけるかは調べておくと、住んでから活動する幅が広がっていくと思います。

子育て環境はいかがですか?

凛さん:子供が0歳の頃からこども園でお世話になり、預けられる環境が整っていたからこそ、仕事を続けられたという点は本当に助かっています。京丹波町の保育園はとてもアットホームな環境だと感じていて、現在、息子が通っている保育園は町内でも最も人数が少ない保育園ですが、その分、先生方が非常に温かく、子ども一人ひとりをしっかり見守ってくれます。また、親同士も気軽に声をかけあう雰囲気があり、まるでみんなで子どもを育てているような感覚です。

京丹波の子どもたちは、いろいろなことに触れる機会が豊富です。ネットを使えば情報は簡単に得られますが、やはり体験に勝るものはないと思っています。私は楽器を演奏する仕事をしているので、子どもにも一流の音楽を聴かせたいと思い、東京からアーティストを招いて演奏会を開いたり、京丹波の保育園で演奏をしたりしました。こうした取り組みを通じて、京丹波で子どもたちに様々な経験をさせられることに喜びを感じています。

さらに、京丹波では自分の子どもだけでなく、地域全体で子どもを育てようという空気が自然にあります。例えば、地元のイベントに篠笛奏者やトランペット奏者、ピアニスト、ヴァイオリニストなどが出演し、第一線で活躍しているアーティストが京丹波で演奏してくれることもあります。こうした経験は、京丹波の子どもたちにとって素晴らしい学びの場となっており、大人が協力して地域の魅力を作り上げていくことが重要だと感じています。将来、子どもたちが自分の故郷に誇りを持ってスタートラインに立てるような環境を作っていきたいと思っています。

京丹波町の子育ての雰囲気は?

京丹波町の雰囲気は、街中の子どもたちとは少し違うと感じています。町の方に比べて、京丹波は本当にアットホームで、のびのびとした環境です。地域性もあるかもしれませんが、子どもや先生たちも負担が少なく、穏やかに過ごしている印象です。町から少し離れたエリアは、どこかポツンとした感じがあり、そこに住んでいる人々も静かな暮らしをしていると思いますが、そうした中でもやはり「のびのび」という特徴は共通していると感じています。

移住して不便に感じたことはありますか?

凛さん:移住して感じた不便な点は、品物の価格です。京丹波町には競合となるお店が少ないため、品物が少し高めに感じることがあります。都市部であれば、複数の店が競い合って価格が下がることもありますが、ここではそうした競争が少ないため、価格が上がりがちです。

京丹波町の人々は非常にクリエイティブで、何かが足りないと感じたら自分で作り出してしまう力を持っています。お店がなければケーキを作ったり、自然のものを使って味噌を作ったりと、手作りのものが多いです。私はお菓子を作ったことがなかったのですが、ここに来てからその影響を受けて、免許を取ってお菓子を作り始めました。子どもができたことも影響していますが、安心して食べられるものを自分で作りたいという思いからです。

大きな街ではケーキ屋さんもあるし、スーパーで買えばすぐに揃うものが、ここでは自分で作ることで新しい発見があり、逆にその不便さが楽しみに変わっています。こうした経験を通じて、地元の人々の知恵や工夫に触れることができ、すごく得るものが多かったと思っています。

移住を考えている方へのメッセージをお願いします。

京丹波町は、周囲の人々が温かく、子どもの成長を見守ってくれる環境があります。物理的・金銭的な面で、都市部と比較してどうかは分かりませんが、私自身は京丹波へ来て良かったなと感じています。困った時には誰かが助けてくれるような地域の温かさが感じられます。

また、インターネットを通じて知る世界だけでなく、実際に五感を使って体験することができるのが京丹波の魅力だと思います。日々の生活の中で、自然の美しさや、地域のつながりを肌で感じながら学ぶことができる、京丹波に住むことは大人だけでなく、子どもにとっても特別な体験になると思います。

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