農と自然の中で、子どもと向き合う時間を大切に
南丹市での子どもの生きる力を育む暮らし

自然豊かな南丹市での暮らしを選んだ藤村さん・荒瀬さん夫妻。農と自然が日常に溶け込んだ環境の中で子どもたちとの時間を大切にし、成長を支えています。移住を決断した理由や、実際に暮らしてみて感じた子育て環境の魅力について、たっぷりとお話を伺いました。

藤村伸二さん・荒瀬千秋さん

京都市から南丹市に移住した藤村伸二さん・荒瀬千秋さんご夫妻。半農半Xのライフスタイルを実現するために家と畑が一体となった環境でお子さんを育てながら、地域とのつながりを大切にした暮らしを楽しむ。自然豊かな環境で「生きる力」を育む日々を過ごしている。

南丹市に移住されたきっかけは？

伸二さん：移住のきっかけは、半農半Xの暮らしを実現するためでした。夫婦共に、もともと小さな農生活に興味があり、周囲にもオーガニックや持続可能な生活に関心を持つ友人が多くいました。

「自分たちの食べるものはできる限り自分で作る」という価値観に共感し、それを実現するために移住を決意しました。以前住んでいた京都市でも、畑を借りて野菜作りに取り組んでいました。

千秋さん：直接のきっかけは、借りていた畑までの坂を上がるのが面倒、家と畑が平らならいいのに、という夫の一言でした。

南丹市を選んだ理由を教えていただけますか？

伸二さん：南丹市定住促進サポートセンターの担当者が、家と畑が一体になった理想的な物件を紹介してくださったことが、決定的でした。田舎でも自宅と畑が離れていることが多い中、家と畑がつながった物件に出会えたことは非常に嬉しかったです。

また、サポートセンターの担当者さんが、親身になってアドイスをくださっただけでなく、私たちが蜂を飼いたいということで、集落の方々にその可否も確認してくださって、移住前から安心して準備を進めることができました。

千秋さん：子どもの学区のことで、この物件にすべきか迷っていた時、「でも育児はあっという間ですよ、そのあとの時間の方が長いんですよ」と、担当者さんが移住・育児両方の先達としておっしゃってくださったおかげで、現在の物件に決められました。

実際に暮らしてみての印象はいかがですか？

千秋さん：日常生活に関しては、スーパーや病院など生活に必要な施設へは車で少し時間をかけて向かう覚悟をし、移住のために免許を取得していたため、特に困ることはないですね。オンラインショッピングの頻度は増えました。

伸二さん：畑の柵や東屋など、自分でものづくりに取り組むことができる点がとても楽しく、充実感を感じています。通勤も自転車から電車に変わり、通勤時間が長くなりましたが、電車の乗り換えがうまくいけば片道1時間15分ほどで通勤できるため、仕事を変えることなく田舎暮らしができる環境に満足しています。

移住をされてみて不便に感じたことや困ったことなどはありましたか？

千秋さん：（うちは敷地の外周囲が大きいので）草刈りが思った以上に大変です。特に、畑の周囲や水路沿いの場所では、水の流れが滞らないよう、しっかり草刈りを行わなければいけません。近年は夏の期間が長くなっていることで、草刈りの回数も増えています。移住を検討している方には、具体的な草刈りの負担、その物件に必要な草刈りの範囲を事前に確認しておくことをおすすめします。

また、鹿による食害も大きな問題で、畑に植えた野菜のほとんどを食べられてしまいました。今後は畑に柵を設置するとともに、鹿に食べられにくい植物を組み合わせて栽培したいと考えています。

子育てするうえでの環境はいかがですか？

千秋さん：子どもとの時間が増えたことが大きなメリットです。以前は送迎時間が短く、通園途中にあまり会話できませんでしたが、車での送り迎えになったことで、子どもとじっくり話す時間ができ、ちょっとした成長や変化にも気づけるようになりました。また、園庭も以前の数倍あり、成長期にしっかりと運動させることができ、将来の成長にも良い影響を与えられるのではと思っています。

一方でデメリットとして感じることは、近所に年齢の近い子どもが少なく、幼稚園の外では子ども同士で遊ぶ機会が限られている点です。ただ、南丹市は京都市内へのアクセスが良いため、定期的に以前住んでいた町に出かけたり、京都市の友人家族を招いてバーベキューパーティーを開いたりして、幼稚園以外でも娘が同年代の子どもたちと楽しく遊べる機会を作っています。

自治体による子育て支援についてはいかがですか？

千秋さん：医療費負担軽減制度は本当に助かっています。1か月1医療機関につき200円の負担で医療が受けられるので、子どもが体調を崩したときにも安心して受診できます。経済的な負担が軽くなり、子育て中の家庭にはとてもありがたい制度だと感じています。

最後に移住を検討されている方にアドバイスをお願いします。

千秋さん：移住を検討されている方には、まず実際に地域に足を運び、地元の人と話をして暮らしの実際を体感してほしいと思います。田舎に住むと、のんびり過ごせるというイメージを持たれる方が多いですが、実際にはかなり忙しくなります。幼稚園や小学校の送迎だけでなく、習い事の送迎にも時間がかかります。特に草刈りについては、自宅だけでなく地域の行事にも参加する必要があるため、田舎暮らしに求められる体力についてもしっかり考えておくことが大切です。

伸二さん：最初から「こういう田舎暮らしをしたい」と固めすぎるのはおすすめしません。そうすると、その理想に合う物件を探すことになりがちです。しかし、物件を見てみると、思いがけないアイデアが浮かぶこともあります。「ここだったらこんな暮らしができそう」といった逆の発想を持つことも大切です。そのためには、地域や行政が主催する地域紹介イベントなどに積極的に参加し、実際に田舎暮らしのイメージが湧きやすい状況を作っていくといいのではないでしょうか。

また、自治体の空き家バンクを活用するとともに不動産屋も活用することをおすすめします。不動産屋には空き家バンクにない物件もあるし、行政とは違った目線での田舎のメリット・デメリットを教えてくれることもあります。両方の情報をうまく活用することで、幅広い選択肢のもと移住の準備を進めてください。