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工房 じつかん

黒谷和紙の灯り

工房 じつかん Kobo Jitukan

工房 じつかん

癒しの空間を生み出す、黒谷和紙の行燈。

工房じつかんは、「黒谷和紙工芸の里」もほど近い綾部市十倉名畑町にあり、目の前には府道1号線を挟んで稲田が広がる見晴らしの良い高台にある。齋藤 實寛(みつひろ)さんのご自宅兼工房として6年前にこちらに移住された。
 
とても美しく手入れされたお庭と、重厚な古民家だが、もともとは20年以上空き家で、背後の山と同化してしまうほど木々や雑草が生い茂り、それらをかき分けていかないと家にたどり着けないほどの状況だったという。建物も、ハクビシンやたぬきなど小動物の住処となるほどボロボロの状態から今の形まで改装された。そんなお話から想像もつかないほど手入れの行き届いた建物から出迎えてくれた齋藤さんは、背すじのスッとのびた185cmはある長身、細身の風貌で、どちらかというと都会的な印象の気さくな方だ。
 
行燈ギャラリーとして使われている離れの建物には、30個以上の様々な大きさの作品がずらりと並び、入口を閉じた暗い室内は、行燈を灯すことで驚くほど落ち着いた空間へと変わった。

工房 じつかん

「行燈作りは、定年した60才からボケ防止ではじめました趣味ですわ」といたずらっぽい表情で話す齋藤さんだが、今まで作った行燈の数は1,000個を越えるそうで、「職人」と名乗って誰も異論ないだろうと思いながら、和やかな雰囲気の中お話をうかがえた。

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今回、森の京都のために制作いただいた行燈は、地元綾部でつくられる黒谷和紙を使っていただくというオーダーのもと、気の骨組みに黒谷和紙を二重に貼り、片方の紙に丸型の障子窓を切り絵として貼り、明かりを灯すことでその窓が美しく浮かび上がって見えるという、齋藤さんオリジナルの行燈だ。
 
明かりは市販の裸電球を使っており、LEDは温かみを感じないので使わないという。電球は、好みで変えることも出来るので、寝室用であれば暖色でワット数も小さく、お店などであればもっと明るいものでも使うことができる。
 
骨組みとなる木材は、様々使ってみたが、今は静岡県から取り寄せているそうで、ご自身の要望に合うものを仕入れて、一本一本磨きをかけ、カットし組み立てていく。ニスなどを使用せず、布を使って磨きを行うので、元の木材の手触りや香りが程よく残っている。
 
黒谷和紙は、とても丈夫で破れにくく、古くから提灯や和傘、障子などに使われてきた素材で、やはり良質な楮(こうぞ)を使ってつくられた手漉き和紙ということもあり、明かりを灯したときに見える細かな繊維の質感が非常に美しい。

工房 じつかん
工房 じつかん

齋藤さんは、今までにも「黒谷和紙協同組合」と共同で作品展示されるなど、和紙を使うだけではなく、協同組合の活動にも協力されている。
 
通常作られる行燈には、日本のものだけでなく気に入れば海外の紙も使うそうで、お店や旅先で紙を見つけると「これに光を通したらどう見えるやろ」といつも想像を巡らせるそうだ。
 
行燈を作り始めてからずっと出店されているのが知恩寺で毎月開催される「百万遍さんの手づくり市」だ。呼び込み的な声がけなど一切せず、お店の奥でじっと座っているそうで、この風貌で腕組みでもしていたら、さすがに冷やかしも来ないなと思うが、本当に商品に興味を持たれる方は、そんな状況でも1時間2時間と、どの商品を購入するか悩み、相談されるという。しかも、そんなお客さまには言われてもいないのに値引きをしてしまい「全然もうからんね〜」と嬉しそうに教えてくれた。非常に優しいお人柄が行燈にあらわれているなと感じるエピソードだ。
 
実際に、購入される方は手づくり市だけでなく、口コミで注文が入ることがほとんどで、そういったお客さまの連鎖で頼まれるのが一番嬉しいとのこと。
 
そんな齋藤さんは、「出会いは人生の宝物。良き出会いをありがとう」という言葉を、会社員時代からずっと大事にされている。
今回、「森の京都」にご協力いただけたのも、この言葉と齋藤さんのお人柄あってのことだと感じました。皆さまにも、ぜひ綾部の「工房じつかん」とともに、「手づくり市」の齋藤さんに会いに行かれることをおすすめします。

工房 じつかん
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