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銘木工芸 山匠

重ねて使える木のうつわ

銘木工芸 山匠 Meibokukogei Yamasyo

銘木工芸 山匠

木材の価値を最大限に引き出す、美山の工房

美山かやぶきの里からほど近い南丹市美山町静原に、「銘木工芸 山匠」の店舗・工房はある。
 
この日はちょうど桜も満開で、気温も20度を軽く超え、春というより初夏を感じさせる晴天の中、代表の馳平(はせひら)さんは、「いやぁ、わざわざどうも」と非常に物腰やわらかく出迎えてくれた。
 
「銘木工芸 山匠」は、京都府内を中心に地元美山の木材をはじめ、必要であれば海外の木材など約40種類の木材を使用し、受注製作をメインとする50年続く工房だ。
 
馳平さんのものづくりは、製品の要である木材の仕入から始まる。仕入といってもただ材木屋に買い付けに行くのではなく、京都中の山という山を見て回り、これはと思う木を見つけては、その山の所有者と直談判。交渉が成立すれば山に分け入って、木を切り工房まで持ち帰ることである。言葉で書くと簡単だが、相当な重労働だ。
 
さすがに、最近では体力的にもキツくそこまですることは少なくなったが、木材置き場には、これまでに集めた銘木の数々が出番を待っている。

銘木工芸 山匠

仕入れた木は、丸太まま使うことはほとんどなく、真ん中の芯と外側を除いた、木目の美しい年輪部分だけにカットする。そして、カットした木材はすぐに使わず、積み重ねてしっかりと「寝かせて」乾燥させる。
 
乾燥は、最低でも7~8年かけて行い、大きなものは数十年単位で乾燥させる必要があり、乾燥期間は永いほどよいという。この乾燥の時間を省いてしまうと、確実に割れや曲がりが出てしまい製品にならない。
 
例えば、お箸など小さな製品は、簡単に作れると思われがちだが、ほんの少しでも曲がりがでれば使う方がすぐに気がつくし、使えなくなるので、どんなにめずらしい木を使っていても価値がなくなる。
 
そうならないために、木材乾燥には非常に気を使うそうだ。実際に拝見した木材置き場は、半地下の暗所で、下りていくと肌寒さを感じるほど涼しい場所で温度変化の少ない環境が作られていた。

銘木工芸 山匠

そして次の工程となる削りでも、一気にうつわの形に削ってしまうと、それも割れやゆがみの原因となるため、数センチ削っては日を置き、乾燥させてからまた削るという作業を何度も繰り返して形を作る。完成形になるまでに一週間以上の時間を要している。
 
そして、これは木の種類が変われば、強度や木目の密度も違うため、それぞれ個性を見極めながらの作業が必要となる。

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今回、森の京都「森のおすそわけ」のために製作いただいた「重ねてつかえる木のうつわ」は、お箸同様小さな部類の製品になるため、しっかりと乾燥させた木材を7種類も選んで使っていただいている。また、木の種類が同じでも、木目の位置はすべて違うため、同じものは一つもない。
 
うつわは、手にとると、木の優しい香りとともに、持ちやすさに気づく。うつわのフチや底面のキリカキも丁寧に面取りされ、引っ掛かりなども一切なく、手触りが非常になめらかだ。
そして、うつわ同士を重ねると、それぞれの木目や色合いが美しい。
お茶菓子用、盛り皿、汁物用として使い方はもちろん、お重のような使い方もできます。
 
そして今回は、上蓋も製作いただいたが、上のツマミが非常に持ちやすく、なだらかな曲線に指が吸い付くように、すっと手に馴染む。こちらは、「ヒノキ」と「樫」の2種類があり、どれも木目が美しい。

銘木工芸 山匠
銘木工芸 山匠
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山匠さんでは、自社商品として携帯用のおしゃれな継ぎ箸や、お香の老舗である松栄堂さんからの依頼で製作した「塗香入れ」は、木工製品では非常に難易度の高い「ねじ込み式」の構造を採用し、粉状のお香がこぼれない工夫をした特許商品もある。
(塗香入れは、山匠さん、松栄堂さんのみでの販売)
ほとんどの商品が、不要な着色はせず、本来木の持っている色を生かしてつくられており、どれも木目が美しく、長く愛用できる商品ばかりだ。

銘木工芸 山匠

取材を通してわかったのは、想像以上に木工製品づくりには手間と時間がかかること。そして、山匠さんのものづくりへの真摯な姿勢が非常に印象的だった。
興味のある方は、ぜひ山匠を訪ねていただき、馳平さんとお話しながら商品選びをされることを強くおすすめします。

銘木工芸 山匠

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