役目を終えた櫂に、命を吹き込む。
「これは絶対商品化しなければ!」
保津川遊船企業組合協会を訪れた際、役目を終えた櫂を見て、この強い想いを持ってから約4年。
京都府南丹広域振興局商工労働観光室の栗林さんは、ようやく商品化にこぎつけた。
保津川を下るために欠かすことのできない「櫂」。
舟の推進力を得るために幾度となく漕ぎ続けられる櫂は、その負荷に耐えられる強度と耐水性が求められる特殊な道具。櫂の原材は、意外にも西アフリカ原産のモアビと呼ばれる木材で、非常に目の詰まった高強度の材である。数年に渡り活躍し、役目を終えたこの価値ある櫂を、後世に伝えていくために別の商品として命を吹き込み、皆様にお届けしたいという思いで、栗林さんが企画・推進してこられた。
そして、商品として形作るために数名の職人に依頼。当ショップでもご紹介している銘木工芸山匠さんや、ひよことパンダの木工店さん、そして今回ご紹介する「幸工房(しあわせこうぼう)」の飯田さんにもご参加いただけることとなり、お話を伺うことができました。
幸工房は、亀岡市篠町の住宅地にあり、自宅兼工房という形で活動されている。
飯田さんが得意とする傾斜彫り(浮かし彫り)を使って作るキーホルダー・ストラップは、お客様からが希望する文字を伺ってからつくるオーダーメイドで、一部、大河ドラマが決定した「光秀」の名前入りストラップなどがある。
商品について打ち合わせをする栗林さんと幸工房 飯田さん。
キーホルダー、ストラップは、櫂の柄の部分を輪切りにしたものを使っています。
傾斜彫り(浮かし彫り)とは、名前の通り切断面が傾斜になるように切る技法のことで、糸ノコで輪郭を一周し終えると、切り取られた部分はすり鉢状になり、そのまま押し出しても抜け落ちないというユニークな技法だ。この技法で作られたキーホルダーやストラップは立体感があり、まさに押しの強い商品となる。また、櫂の「柄」の部材を輪切りにしたものを使っているため、商品のフチ部分は櫂として使われていた表面部分そのものとなっている。
飯田さんは、7年ほど前に長年勤めた会社を定年退職後、子供の頃から思いを募らせていた木工製作を始められた。最初は、お孫さんのために木のオモチャを作っていたが、そのうちに知人から依頼を受けるなど口コミで依頼件数も増えていった。傾斜彫りを活かした表札やトールペイント用の台材、羽子板など依頼があれば楽しみながら受けられている。今では、登録者数300名を越える「京都丹波クラフト友の会」の会長を務めている。また、奥さまも和服をリメイクして洋服や小物をつくられるご趣味をお持ちで、お二人で「幸工房」として知恩寺で開かれる手づくり市に出店されるなど精力的に活動されている。
今回の取材では、充実感のある飯田さんの笑顔が非常に印象的であった。
幸工房(しあわせこうぼう)
- 〒621-0821
京都府亀岡市篠町柏原川原垣内17-46 - TEL
080-1503-1448 - E-mail
siawase-iida@zeus.eonet.ne.jp